第２艦隊第４戦隊　「高雄」（たかお）
2F4S TAKAO

　「高雄」型は 「妙高」型４隻に続いて建造され、攻撃力・防御力ともに条約（ワシントン条約）型巡洋艦としての集大成ともいえる優れた艦です。 「高雄」型はそれまでの設計者である平賀設計主任に代わって、艦本第４部の主任設計者藤本造船大佐が担当したもので、非常に目を引く大きな艦橋構造が特徴となりました。艦橋の巨大化は用兵側の要求を出来るだけ満たそうとした結果で、平時の演習には便利でも 、いざ実際本当の戦闘になったらターゲットが大きくなるなどのマイナス評価を受けました。そのため、次の「最上」型と「利根」型は艦橋が一転してコンパクトなものに変更されました。しかし太平洋戦争中に艦橋の大小が作戦上不利を招いたことはなく、むしろその城郭のように聳え立つ「高雄」型の艦橋の造形美は、今もなお多くの軍艦ファンを魅了し続けています。
　
　 「高雄」型重巡洋艦のネームシップたる「高雄」は、昭和２年（1927年）４月28日に横須賀海軍工廠にて起工され、昭和５年（1930年）５月12日に進水、昭和７年（1932年） ５月31日に竣工しました。即日横須賀鎮守府所属となり、同年12月１日第２艦隊第４戦隊に編入され任務に邁進しています。将来生起しうる米国主力艦隊との本格的決戦に備え、当初から「 高雄」型４艦は、「妙高」型４艦とともに対米漸減作戦のカナメである第２艦隊に配属され、前進部隊の一翼を長く担ってきました。

　製作手順の詳細は、【重巡洋艦「高雄」（開戦時仕様）製作記】part１〜４をご覧下さい。→

　「高雄」は昭和13〜14年に近代化改装を受け、開戦に臨みました。 この近代化改装は艦橋の形状や後マストの位置を大々的に変更する大改装で、「高雄」の姿は一変したといっても過言ではないでしょう。「高雄」の主な改装ポイントを、簡単に以下の表にまとめてみま す。あくまで目安ですが、 この程度を押さえておけば模型制作に支障はないでしょう。実際には構造 、材料、主機、内部居住区の細部にわたり、細かな変更が施されています。

　開戦時「高雄」は第２艦隊第４戦隊に所属し、「愛宕」とともにマレー上陸作戦支援に参加しました。 開戦後、リンガエン上陸作戦支援、ポートダーウィン空襲支援、ジャワ南方機動作戦等に参加。米駆逐艦ピルズベリーを「愛宕」と協同で撃沈したりしています。
　昭和17年３月下旬に横須賀帰着。船体整備と高角砲の換装などを行ったのち、ミッドウェイ作戦の準備。その間、東京初空襲を敢行した敵機動部隊の索敵とか雷撃された「瑞穂」の人員救助に出動しました。

　ミッドウェイ作戦では北方部隊第２機動部隊に所属し、ダッチハーバー攻撃支援。その後は主として南方にあり、第２次ソロモン海戦、南太平洋海戦、第３次ソロモン海戦といった名だたる海戦に参加しました。その間もトラックやソロモン海域にあって、ガダルカナル島撤退作戦の支援や輸送作戦支援に奔走しています。

　昭和18年以降日本軍の劣勢状態が明らかになるにつれて、「高雄」の活躍する場もだんだん狭くなり、昭和18年中はトラックを基地にした輸送作戦や警戒・護衛作戦に従事することが多くなっています。ラバウルでは２番砲塔右側に被弾して損傷をこうむり、横須賀に帰投して修理を余儀なくされました。
　昭和19年以降はソロモン海域を後にして、主にリンガ泊地やシンガポールにあり、訓練に従事しました。昭和19年６月、タウイタウイを出撃してマリアナ沖海戦に参加。

　その後、捷号作戦に備えてリンガ泊地に進出し、猛訓練に励むことになり、昭和19年10月下旬リンガ泊地を出撃。ブルネイ湾からレイテを目指します。しかしパラワン水道にて、僚艦の「愛宕」「摩耶」とともに雷撃を受けてしまい、「愛宕」「摩耶」は瞬時に轟沈。「高雄」はかろうじて沈没を免れたものの、レイテ作戦従事は無理となり、ブルネイ湾を経てシンガポールに帰着しました。
　本格修理は内地で行う予定でしたが、すでに近海には敵米潜水艦が跋扈していて、内地に向かう途中に雷撃をこうむるありさま。そのため、内地回航は断念。内地に帰る機会のないまま、結局シンガポールにそのまま足留めになってしまいました。レイテ海戦で損傷した「 妙高」も全く同じ状況に置かれ、日本海軍を代表する重巡洋艦の「妙高」型と「高雄」型のネームシップ２艦が、奇しくも動けなくなって外地に係留されたままになるという事態になってしまいました。まさに、落魄し崩壊寸前の日本海軍そのものを象徴するものとして、切歯扼腕たるものを感じます。

　昭和20年7月ジョホール水道に停泊中に、英豆潜水艇XEの放った吸着時限機雷が３番砲塔右舷艦底で爆発し、浸水により行動不能の状態になりました。この状態で敗戦を迎え、結局英海軍の手で 海没処分されるという悲しい結末を迎えることになったのです。
　いくら敗戦の身分とはいえ、敵軍による海没処分という結末はやるせないものがあります。しかも行動不能に陥った直接の原因は、英豆潜水艇によるものですから、このような隆々たる大艦が豆粒のような潜水艇にしてやられたという現実は、なんともくやしい限りですね(--;)凸。

　私にとって、「高雄」型は 「妙高」型と同じく日本海軍巡洋艦の中でも最も好きな艦達の１つです（というか、私の場合巡洋艦全部が甲乙つけがたく大好きなんですけどね）。
　下写真のように海面近くまでカメラのレンズを下げ、「高雄」に近づく海上の内火艇の目線で見てみます。第２次改装によって近代的な艦として完成した、芸術的な艦姿がたまらないですね。 流れるようなシアーとシェイプされたスマートなシルエット、船体中央部のグラマラスなバルジ。外国艦には絶対にない独特の洗練された味を醸し出していて、これはもはや兵器の範疇にとどまらず、国宝的工芸品ではないかとすら思ってしまいます。海上からの目線で撮った写真を見ると、より一層その感を強くしますね。

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