第６艦隊第１潜水戦隊 「イ−９」
6F1SS I-9

　昭和12年度の�B計画をもって、日本海軍は巡潜型大型艦の大幅増強を目指すこととなり、新たに甲、乙、丙型潜水艦の建造に着手しました。甲型潜水艦「イ−９」は、この計画に基づいて潜水戦隊旗艦として計画されたもので、司令官室、幕僚室、作戦室等の居住区画や通信設備が一段と拡充されています。そのため基準排水量は2,434トンと従来の巡潜型よりさらに大型化され、定員も大幅に増員されて114名となりました。
　主砲には40口径11年式14cm単装砲を採用し、また乙型と同じく水偵射出機（呉式1号四型）を艦首に装備し、水偵1機を艦橋前部に格納しています。搭載水偵は、甲型では零式小型水偵が採用されました。その他25mm連装機銃が各１基艦橋前後に設置されています。
　「イ−９」は昭和16年2月13日に呉工廠にて竣工し、即日横須賀鎮守府に配属されました。

　製作手順の詳細は、【潜水艦イ-７、イ-９、イ-１５、イ-１６（開戦時仕様）製作記】part１＆２をご覧下さい。→

資料：光人社・ハンディ版「日本海軍艦艇写真集　19」から抜粋

　「イ−９」は、開戦時第６艦隊第１潜水隊に所属し、ハワイ作戦に参加しました。潜水艦部隊のハワイ作戦参加の模様は、井浦祥二郎氏著「潜水戦隊」に詳しく述べられています。特に旗艦として司令官や幕僚が座乗していたにもかかわらず、幕僚室の狭さや艦内の生活の大変さが詳しくかかれていまして、一読の価値があります。
　その後「イ−９」はハワイ南方を行動し、ハワイの飛行偵察に成功。さらに昭和17年3月の飛行艇によるハワイ攻撃作戦（Ｋ作戦）にも、無線連絡役として参加しています。昭和17年5月以降は、キスカ方面を手始めにソロモン、ガダルカナルまたキスカと、南に北に出動を繰り返しました。昭和18年6月14日にキスカ付近で米駆逐艦と交戦し、乗員の奮闘むなしく沈没しましたが、このキスカ輸送作戦が最後の作戦従事となってしまいました。
　なお戦果ですが、「イ−９」、「イ−１０」、「イ−１１」の同型艦3隻で合計19隻・96,481トンの商船を撃沈しています。これは主にインド洋での通商破壊作戦によるもので、残念ながら本来の目的であった戦隊旗艦としては、充分な働きの場が与えられなかったようです。

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