海上自衛隊汎用護衛艦「てるづき」
JMSDF Destroyer DD-116  TERUZUKI

　四方を海に囲まれた我が国は、資源を海外に依存するために、シーレーン防衛が国の重大な安危にかかわります。また太平洋戦争でのシーレーンの軽視や米海軍潜水艦による被害が甚大だったことなどを反省し、海上での主な戦闘が大型水上艦艇ではなく潜水艦が相手となる事態を想定して、海上自衛隊では発足当時から対潜水艦作戦に対応する護衛艦を揃えてきました。
　汎用護衛艦（DD）とは、ある一定レベル以上の対潜、対空、対艦攻撃力を保有しヘリ搭載能力も確保しつつ、潜水艦を探知・攻撃することを主な任務とする護衛艦です。数量的及び能力的に護衛隊群の中核を構成し、DDHをサポートします。


　最新鋭の汎用護衛艦「あきづき」型は前々型「むらさめ」型や前型「たかなみ」型に代表される汎用護衛艦のさらなる性能向上を図ったもので、ミサイル防衛構想において「こんごう」型や「あたご」型のイージス艦が弾道ミサイル防衛に専念する際に、手薄になる可能性のある敵航空機や対艦ミサイルからの対空防御を補完すべく、僚艦防空を行うことを目的としています。
　船体は「たかなみ」型に準拠しつつ、海自初めての採用となるスタンフラップと呼ばれるヒレ状の突き出しを艦尾下部に装備し、速度、安定性、燃費の向上や騒音の低減が図られました。艦橋を始めとする上部構造は「あたご」型を踏襲して舷側まで拡大し、マストは塔状マストになり、平面固定型対空レーダーを装備するなど、前型よりさらにステルス性能が向上しています。
　「ひゅうが」型に搭載した戦闘指揮システムOYQ-10とフェイズドアレイレーダー搭載による多標的同時補足・攻撃が可能な対空戦闘システムFCS-3は、それぞれOYQ-11、FCS-3Aとして性能強化され、高い防空能力を与えられました。さらに乗員居住性の改良なども盛り込んで、次世代汎用護衛艦のモデルシップとして建造されています。


　「てるづき」の名前は、1960年に竣工し海上自衛隊発足以来初めて排水量2000トンを越えることになった「あきづき」型護衛艦の２番艦「てるづき」を踏襲しています。この「てるづき」は竣工後１年経って創設された護衛艦隊の初代旗艦となりました。
　現「てるづき」は旧帝国海軍時代から数えると３代目となり、初代は「秋月」型防空駆逐艦の２番艦で、艦隊の防空任務を基本とするところが同じことから「あきづき」と同じく艦名を継承しました。ネームシップの１番艦が「あきづき」（「秋月」）、２番艦が「てるづき」（「照月」）、３番艦が「すずつき」（「涼月」） 、４番艦が「ふゆづき」（「冬月」）となっています。

　製作手順の詳細は、【海上自衛隊汎用護衛艦「てるづき」DD-116製作記】part１〜4をご覧下さい。→
If you want to know more details of the production procedure, please click on this button and see the "making points of JMSDF Destroyer TERUZUKI DD-116" (But this production description is described in Japanese only).

　なおこの「てるづき」は2014年4月に大日本絵画より出版された『現用艦船模型倶楽部へようこそ　海上自衛隊編２』（サブタイトル/艦船模型実践テクニック講座）に収録されています。

　「あきづき」型の近代的でシャープな全景。海上自衛隊の新たな主力ワークホース としての貫禄が感じられます。
　下２枚の写真のうち、上がアオシマのキットを使った「てるづき」。下がピットロードのキットを使った「あきづき」。一目瞭然でピットロードのキットの方が乾舷の低いのが分かります。これは好みの問題になるのかもしれませんので、どうしても乾舷が低く感じるようであれば、船底に0.5mm厚プラ板を貼ってかさ上げすれば違和感はなくなるでしょう。

　ステルス性向上を狙った巨大な艦橋と搭状マストが「あきづき」型の特徴と言えるでしょう。１本にまとめられた巨大なトラス状マストがモダンな艦姿 を醸し出しています。後部上部構造物の凸凹感（ゴチャゴチャ感）もこの型ならではの特徴と言えそうですね。

　艦首と艦尾の方向から正面をパチリ。ヘリ格納庫はシャッターを開けた状態で作ってみました。

■「てるづき」と「あきづき」の識別点
 同型艦なので、船体、上部構造、兵装ともに基本的には同じ仕様です。そのため識別は主に艦名と艦番号で行うことになります。あえて細かい点を挙げると以下のようになるでしょう。「あきづき」と「てるづき」を作り分ける際の参考にして下さい。

�@艦橋前の甲板の通行帯の形状が異なる。「あきづき」の通行帯は横道が２本あり後の横道は屈折しているが、「てるづき」には前の横道がなく後の横道もストレート。

�A「あきづき」では、前部CIWSの横の艦橋甲板に片舷１基ずつの機銃が置かれているが、「てるづき」では機銃２基はヘリ格納庫の天蓋後方の両舷に置かれている。

�B後部上部構造物の両舷に設けられた張出しに、「あきづき」ではUSC-42衛星通信アンテナが片舷１基ずつ設置されているが、「てるづき」では2013年１２月現在に至るも未設置。

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