超弩級戦艦「扶桑」（開戦時仕様）製作記＜part１＞

竣工艦艇 ：　超弩級戦艦「扶桑」

仕様 ：　出師準備完了後の昭和１６年１２月末（開戦時仕様）

キット ：　ピットロード製ハイモールドシリーズレジンキット

参考資料 ：　ヤヌス・シコルスキー「戦艦扶桑図面集」
　　　　　　　　学研太平洋戦史シリーズ３０「扶桑型戦艦」
　　　　　　　 海人社「ハンディ版日本海軍艦艇写真集　扶桑・山城・伊勢・日向」
　　　　　　　 文林堂「世界の傑作機４７　日本海軍水上偵察機」

製作期間 ：　2000年12月〜2001年1月の約２ヶ月

【はじめに】

　日本海軍が初めて自力で竣工させたといえる超弩級戦艦「扶桑」ですが、活躍の場がほとんどなく最後の出陣が悲惨なものになってしまったものの、日本海軍戦艦の中ではそのユニークな艦橋スタイルもあってか、非常に人気のある艦の１つです。
　このようなロマン溢れる「扶桑」を製作したいと考えている人は多いのですが、如何せん従来のＷＬＳで製品化されているアオシマ「扶桑」は形状、考証ともに古さが否めないため、リニューアルが待望されています。一方、ピットロードのハイモールドシリーズから製品化された「扶桑」の方は、インジェクションキットではなくレジン製品で、モールドの精密さと考証の点で非常に満足のいく出来映えとなっています。

　このハイモールド「扶桑」は、原型製作にあたりヤヌス・シコルスキー氏の「戦艦扶桑図面集」を参考にしたというだけあって、細かいディテールが忠実に再現されています。キットを詳細に眺めますと、開戦時仕様になくてはならない舷外電路や艦首及び船側のフェアリーダーのたぐい、さらに甲板上のウィンチや通風筒といった突起物の位置、数ともに正確で、追加作業や手直しの必要がほとんどない優れたキットです。
　レジン製品なので敬遠気味の人がいるかもしれませんが、このキットに関しては切削しやすい材料のおかげもあって非常に作り易いものになっています。私も、製作期間が約２ヶ月で済みました。
　非常に作り易くしかも追加考証を必要とする箇所がほとんどないため、今回の製作記は２回に分けてアウトラインを概説するに留めます。なお追加考証に関しては、船体と艦橋で各一箇所を追加したのみで済みました。
　

１．船体製作

　まずは、事前にキットを良く洗浄することをお忘れなく。私の場合は念入りに３回程度中性洗剤で良く洗い、そのあとしっかり水洗いをしています。レジンキットの宿命でしょうが、開封した時点ですでにかなり反りが入っていました。最後までこの反りが直らなかったので、最終的に台座に６本のボルトでしっかりと固着してしまいました。完成してからすでに１年近く経ちますが、現在のところ反りや曲がりは特に見られません。
　
　キットの船体はアオシマのキットに比べて乾舷がかなり低くなっています。バリがあれば取り、全体の表面を軽くやすり、ピンホールをパテ埋めします。舷窓はモールドが幾分浅いので、０．６ｍｍφドリルで穴を深くしておきます。艦首旗竿、手すり、張り線用支柱を真鍮線やエッチングパーツによってつけていきます。

　前回製作した「金剛」では、副砲を古い作品からそのままコンバートしてしまった（手抜きと言います(^^;)）ので、他の部分がハイディテールにもかかわらずちょっとチグハグな印象を持たれたと思います。しかしこの「扶桑」では副砲をしっかり作っています。キットの副砲砲身はメタル製でかなり大ぶりですので、これは使わず、０．４ｍｍφ真鍮パイプを使いました。
　繋船桁を０．３ｍｍφ真鍮線と０．３ｍｍ幅プラ板でそれらしく作ります。またこの時点で、カッターダビットの固着ブラケットや折り畳んだ状態のダビットを、舷側に接着しておきます。

　この素晴らしいキットに対しあえて言うことがあるとすれば、第５砲塔基部のベンチレータの見落としについてでしょう。ここには下の画像に示すような大きなベンチレータが数本立っていまして、非常に目立ちます。ここはぜひ追加作業で、自前のベンチレータをつけ加えてあげたいものです。
　艦尾旗竿、手すり、クレーンパーツをそれぞれつけます。海上を疾駆している時は当然水偵揚収クレーンは倒した状態になりますので、今回はクレーンを倒した状態にしてみました。この場合クレーンのトラス部分をエッチングパーツで組み立て、支柱を０．８ｍｍφ程度の太めの真鍮線にします。

　このように船体の組み立てはこれで終了。追加考証の必要が少ないキットは、組み立てやすいの一言ですね。ストレスなく製作に打ち込めます。

２．艦橋の製作

　艦橋も説明図に従ってスラスラ組み上がります。艦橋支持支柱は難なく入れることが出来ますので、「金剛」と違って艦橋各部を組み立てたあとからでも差し込むことが可能です。

　私が追加工作したのは、以下の画像に示す部分です。各部は主にエッチングパーツと真鍮線を使いましたが、９０式無線電話空中線は０．２ｍｍφ真鍮線にした方が良かったかもしれません（工作強度を考えて、０．２５ｍｍφにしましたが…）。
　艦橋の窓は一旦キットのモールドを削り取り、エッチングパーツのラッタル等を使って窓枠表現をします。

　なお、学研「扶桑型戦艦」の１２９〜４４ページによりますと、開戦時には上部見張所及び照射指揮所の見張方向盤は、外側２個が撤去され内側２個のみになっていたとの指摘があります。よってそれに従って、キットの見張方向盤のモールドを削って修正します。
　作り上がった艦橋を見ますと、やはり日本海軍戦艦の櫓マストというのは力強く重厚感に溢れるものだという印象をさらに深めました。各階をお城のように幾層にも積み重ね櫓のようにする方式は、日本海軍独自の発想と試行錯誤によるものですが、雄大かつ優雅な姿を形成するのに大きなポイントとなっています。

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